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「ハート」プラス「ガッツ」  169

<「ハート」プラス「ガッツ」> 

          
1.“管理”では勝てない  

  こんな言葉からはじめます。
  「従来の組織は“管理”のうえに成り立っていたが、世界は変わったのだ。
  世界は今や『管理が制約となるほどのペースで動いている。管理は、すべ
  てをスローダウンさせる』 自主性とはいままで我々が考えていなかった
  レベルのものであるべきだ。価値を測るため我々は人が何を管理したかで
    なく、何に貢献しているかをみようとしている。」

  これを言ったのは、アメリカで最も尊敬され「20世紀最高の経営者」と
    称された1981年にGEの会長に就任したのジャック・ウェルチで、
  『管理』や「ピラミッド組織」の機能不全を指摘していたのです。
  その彼がこんなことも言っています「GEを一つにつなぐ接着剤は、外部
  との競争にがっちりと取り組み、勝ちたいと思う人々の親和力だ。」

  アメリカについてですが、ジャック・ウェルチだけが21世紀に向かうな
  かでIBMやGMや倒産してしまうシアーズローバックなど多くの優良企
  業が「大企業病」に感染して機能不全を起こしたのに、
  未来の衰退の兆候を予見して、好業績のさなかに大改革を断行しその後の
  さらなる成長を実現させたのです。

  ※これは、もちろん日本でも起こっていることで、大企業だけでなくそこ
  そこの組織的に整備された中小の企業でも起こっていることです。
  整備されている企業ですらそうなので、整備されていなければ議論外です。

  「勝ちたいと思う人々の“親和力”」という不思議な言葉を使っています。
  彼は、最高評価する「Aランク」のマネジャーの条件として「財務その他
  の業績目標を達成」に加え、ここで「企業価値の共有」をあげており、
  そして、絶対条件として『企業価値の共有』がなければ「業績目標を達成」
  がなされていても去ってもらうより仕方ないとしたのです。  

  1990年代よりのバブルの崩壊とともに、それまで有効であったとした“官
  僚的な管理”は、それ以降その効果が逆機能となってきたのです。
  ハードからソフトへ、モノから知識に、強みの力点が新たなレベルへと転
  換し、今求められているのは模倣でないナンバーワンもしくはオンリーワ
  ンとなり、人がもつ創造的な境界のない強い結集が必要となりました。

  ここに「勝ちたいと思う人々の“親和力”」を沸き上がらせるための、
  「共通価値」の確認、提起、浸透、定着つまり企業文化の再構築が差別化
  の形態としてでなく標準のベストプラクティスとして求められる。


  ユニクロの柳井正さんは、
  「世界一を目指さないと何をやっているか分からない。『金メダルを絶対
  取るんだ。』という意思がない限り勝てない。」と言い。
  ために、2017年に江東区の有明本部の稼働させるに際して大幅な組織改革
  を実施して、ワンフロアーに商品企画、生産、マーケティングなどを集結
  させて、さらにリーディングルームを設けてさまざまなチームが連携し即
  断即決で商品づくりを促進させる場として挑戦させたのでした。

  ユニクロの柳井さんも「勝ちたいと思う人々の“親和力”」を標榜し、そ
  れが発揮できる組織体制の構築を目指していると言えます。

  1980年代それ以降、
  企業が存続するため成長するためには、否応なしに「グローバルで急激な
  次元の違う環境」に適応しなければならなくなっているのはご存じの通り、
  「お客様の声を“率直に”聞き“機敏”にその思いや願いに真摯に応える」
  ことこそが、より以上に企業を成長、存続させる手立てとなります。
  さて「そうしたらどうするんだ。」と言うことになります。
  
  また、ジャック・ウェルチの言ったことを聞きます。
  「GEも終身雇用を前提にした暗黙の心理契約持っていた。これが曖昧な
  忠誠心をつくりだしてきた。しかし、今日の事業環境は市場で勝ち抜いて
  いかない限り、安全な雇用を確保できるような状況ではなくなってきてお
  り、人々の感情的なエネルギーを外部の競争に向けなければならない。い
  ままでの心理的契約は変わるべきである。」

  ウェルチによると競争に勝ち抜くのには、
  「『やる気に満ち』『仕事にコミットし』『責任感をもつ』人々によって
  動かされる組織をつくり出さなければならない。従来の“管理”をベース
  とした組織は塵の中に埋もれ、やがて消えて行く。」
  そのため「筋肉質で敏捷な企業」づくりを目指さなければならない。
  
  少し、分かりにくく自分には関係ないとお思いかもしれませんが、
  ほとんどの人がそう思っているなかでの、
  「筋肉質で敏捷な企業」になるめの、さらに言うと勝つための処方箋は、
  ジャックウェルチが必死で考え尽したアイディアの模索、実践しながら獲
  得した智恵なので、その成果の意味合いの理解が求められます。
  
  今私たちが塵の中に埋もれないために、
  彼の行った改革のもとにあるアイディアを知ること、強い企業への至るた
  めのイメージを明確化して行けると思うのです。
  「共有価値」とは何か、それが何故必要なのか、またどのように活用する
  のか、また「マネジャー(リーダー)」や「従業員」に何を求め、どのよ
  うに導いて行くのかの諸々の意味を考えて行きます。

 

2.あるべき「共有価値」
  ジャックウェルチが考える基本的な生き残りの企業戦略は
  “その業界でのナンバー1かナンバー2”であり「市場シェアの小さな企
  業は、やがて限界的かつ脆弱な存在となる。市場シェアは致命的に重要で
  ある。限界的な存在になるということは、長期的に見たとき企業の存続に
  とって極めて危険である。」とするドラッガーの考え方に沿っています。
  
  そうならないために、社員全員に「共有価値」が求められるのです。
  それを「誠実、品質、卓越、サービス、敬意」とのみ言うならば、ウェル
  チはこう教えます「品質やサービスを大切にしない会社や顧客を第一に考
  えない会社がどこにある。冗談じゃない。まともな会社ならそんなことは
  信奉しているに決まっている。それは“入場券”のようなものだ」と。
  
  企業は、自身が強みを持つか発揮できる業界・分野を選択し集中し「共有
  価値」のもとに人材を育成し配置して、大胆に権限を委譲します。
  リーダーはリーダーシップを発揮して、現場の従業員の知恵と活力を引出
  し、協働のもとにストレッチ(伸長した)目標に向かって、内外の専門家
  の垣根を超えてスピーディに個々プロジェクトを達成するのです。


  トヨタを偉大な会社になさしめた 立役者「大野耐一さん」の話です。

  大野耐一さんから仕事の指示を受けたある課長が、即座に“できません”
  と答えてしまったのだそうです。
  そうしたら大野さんは「お前(課長)には多くの部下がいる。人間は真剣
  になれば、どれくらいの知恵が出るかわからん。やりもしないで、引き出
  しもせずに“できません”とは何事か」と烈火のごとく怒ったそうです。

  「やりもしないで“できません”」は、言った課長本人はもちろん部下の
  可能性まで摘み取り、さらに企業全体にまで及んで行く、ここのところを
  大野耐一さんが烈火にごとく怒ったのです。
  トヨダの企業理念「労使相互信頼・責任を基本に個人の創造力とチームワ
  ークの強みを最大限に高める企業風土をつくる」というものがあります。

  トヨタの創業者であった豊田喜一郎さんの“夢”は、自動車産業を日本の
  基幹産業に育て上げようとするモノでした。
  しかし、そのために外部から技術を導入して一気に軌道に乗せようとする
  のではなく、またアメリカを凌駕するために多品種少量生産は不可欠で独
  自の技術を開発、創造するより法をないとしたのです。
  
  トヨタの共有価値は、現場の従業員の知恵を信じて引出し活かしてさらに
  チームワークによって、最大限に成果を実現させようとするものです。
  「数量管理」「品質管理」「人材育成」は、上司の真剣で真摯な問いかけ
  により究極の“智恵”と“実行”が「導き」出されて、そしてその人材が
  やがて強みの源泉であるリーダーに成長して行くというものです。

  トヨタの「共通価値」は創業者の意思に始まり、独創と改善を内外も一体
  になって実現しようとするもので、現場の従業員を「専門家」としてまた
  「リーダー」として育て上げようとするものです。
  トヨタは創業のはじめからして「共有価値」を持った持っていたからまた
  持たざるをえなかったから、成長が可能となった企業だと言えます。

  “入場券”以上のものを顧客に提供できる企業のみが存続し繁盛します。
  “管理”では、現場の従業員に手や背中や足の働きの強要しかできません。

    GEの話に戻します。
  ジャックウェルチは、企業の共有財産であり強みの源泉である社員に「頭
  脳とハートとガッツ」を求めました。
  
  「頭脳」:知性と専門知識、それを持つ人材は見出せ、かつ育てられます。
  「ガッツ」:自己確信、持たない人間は「失敗を乗り越え、成功を経験す
  ることによってそれを獲得できる。」と確信していました。
  「ハート」:人間性への理解、相手への配慮、分かちあう気持ち、自分の
  エゴをチェックする能力、感性、これを必死に育もうとしたのです。

  「現実を直視しろ」
  もはや企業は雇用を保証する能力を失っており、雇用を保証できるのは顧
  客に貢献できる能力を有する従業員本人だけなのである。
  「ストレッチ(引き伸ばす)」
  極限まで引き伸ばした目標設定で緊張感が生まれ、人材の成長が促進され
  またその実現が企業の強みとなる。
  「バウンダリレスネス(境界のない組織)」
  部門障壁、階層の障壁、外部との障壁を取り払い協力することで、知識が
  交換・増殖され、それが成功にとっての欠くことのできない条件となる。
  「率直さ、スピード、自己確信」
  これらの「価値」が、状況に応じ柔軟に目標基準として展開されて「変革
  の精神」が醸成され実行されて強い組織への変革がすすんだのです。
  
  GEの変革の過程で最も重きをおいたのは社員で、その人たちの知恵と責
  任感を促し顧客に貢献できる“人財”として遇したのです。
  そのために、「ハート」の質を重視した採用プログラムや、さまざまな機
  会でリ-ダーシップ・プログラムを実施し、人間らしい新しい世代のマネ
  ジャーを育成しようとしていることは疑問の余地はないことなのです。


  「人は、何によって有能な人材に育て上げられるか。」を整理します。

  1.上司は自身が関わりを持とうとせず、問題点について部下を恫喝する。
  部下は、一応その場を取り繕うか無視し、そのあげく上司を軽蔑する。
  現場の現状は何も改善されず、人材は破綻し育たず、業績は低下する。
  2.上司が問題点の改善について、自身の知識にもとづいて指導する。
  人間関係は穏便だが、人材は幾分育つが、業績は停滞を余儀なくされる。
  3.上司は問題解決と人材育成に強い関心を持ち、両方の改善をはかる。
  強い緊張感が生まれるが、部下の能力開発が促進され根本的な問題解決も
  はかられ、業績の向上がはかられる。
  第3の道が、トヨタでありGEが行ったのがこれであり、大野さんは問題
  解決について共に悩み、部下に直接指示せず自分で解決するように促し見
  守り続け、それによって強いリーダーを育てて行ったのでした。

  世に求められるリーダーとは、
  「ガッツ」とさらに「ハート」を兼ね備えた人材であり、
  そうでなければ、すくなくとも「ハート」を持った人材であること。
  「頭脳」が部下以上であることなど条件ではなく、
  部下の「頭脳」を賞賛・評価できる品性があれば、それで充分なのです。

  「ハート」のない「頭脳」をリーダーにすれば、
  その「頭脳」の利己動機のために、多くの“人材”は手段として従属させ
  られて、つかの間だけ錯覚の成果の光彩を放ちます。
  その後には、強みの貴重な資源である“人材”と組織の活力を「減衰」さ
  れてしまい、これを防ぐにこそ「価値」の共有が求められるのです。