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人を使うは“苦”をつかう  166

<人を使うは“苦”をつかう>

 

1.「有能な人材」とは            
  三国志の英傑である「曹操」をマネジメントの視点で見てみたいのですが、
  最も重んじた政策は何だったのか、それは「有能な人材の登用」でした。
  「天下の知恵を集めて、天下の道理に従って、どうして天下に出来ないこと
  があろうか。」と、これは松下さんの「何のさまたげも受けずして融合活用
  されたとき“衆知”はその社会を支配する叡智になる。」と同じくします。
 
  西暦200年前後に曹操は『求賢令』を布告して才能を求めたのですが、
  そ思いはすさまじく『唯才是挙(たださいのみこれあげよ)』というもので
  『才能さえあれば、どんな不仁不孝であっても関係なく登用する』というも
  ので「嫂を盗みわいろを受けしとて、才あらば之れを用いん」とまで言い切
  っており、成果に貢献できる限りにおいてなら誰でもOKとしました。

  ところで、一つ確かめたいのですが「有能な人材」とはということで、
  こと曹操や松下さんについてはまったく同意見のようで、それは一点に絞ら
  れており“使命実現”に貢献できるかどうかということです。
  曹操が目的とする「使命」は「民が豊に安心して暮らせること」つまりその
  ための「食糧の生産力の向上」と「軍事力の強化」でした。

  だから、この“使命”に役立つ「“智恵”と“熱意”を持つ“人材”」であ
  れば、その出自や身分、性格は一切問わなかったのです。  

    196年に曹操は「屯田制」というものを導入したのですが、これは武将である
  韓浩・棗祗らの提言に従ってのものです。
  多くの流民に荒廃した土地を開墾させることで、安定した食糧供給ができ、
  また兵士として駐屯させることで勢力拡大をはかり、また司馬懿の提言で国
  境付近においても展開させて争いを有利にしたのです。
 
  ここでわざわざ「屯田制」のことをあげたのは「使命」を実現させるに必須
  の二つのこととして「知識」と「革新」の意味を考えたいからです。

  「屯田制」はまったくの「独創」ではなく過去にも行われたことではあった
  のですが、この「革新的な制度」を取り入れることでその政治基盤とさらに
  軍事基盤は一新され「民の幸福という“使命”」に一歩近づけました。
  「制度」の“知識”を持つ者の意見を採用し、決断し、活用して組織制度を
  “革新”することをもって天下に覇をしめすことができたといえます。

  
  話が変わりますが「セル生産方式」というものをご存じでしょうか。
  一人もしくは数人で、一台の製品の組み立てを完成させるという方式です。
  この生産方式を「ベルト・コンベア生産方式」に変えて採用することによっ
  て、8,400億円あった負債を実質0円にまで削減した企業があります。
  その企業は「キャノン」で、それを採用した経営者は「御手洗富士夫さん」
  で、現場で実現させたのが「女性従業員」でした。  
  
    キャノンはこの方式をとることで、生産性を向上させ工場のスペースは6割
  減。使用電力とCO2排出量はほぼ半減。売上高経常利益率は1.5%から13%ま
  で8.6 倍に向上させることができたといわれています。
  
  この方式が最初導入され、成果を得たのは長浜工場でしたが、
  その当初、生産性はこれまでよりも劣り現場からは不満の声が上がりました。
  そんななか、この苦境を打開したのが「女性従業員」で、自主的にチームを
  つくり終業後にミーティングを重ねて改善活動を行ったのです。
  結果、生産性は向上しやがては8分の1の時間にまで削減させて行きました。

  彼女たちがそのように励んだのには、社長である御手洗さんの強い関心と支
  援とキャノンの企業文化「三自の精神(自発・自治・自覚)」があったから
  のことで、御手洗さんは「“常識”だとされていることを打破するためには、
  現場を回り、直接話をし、理解と支持を得る努力が不可欠だ。そして向上心
  に期待し、成果を“ほめる”仕組みが大事だ。」と言っているのです。

  さらに少し話を加えますが、
  この成功を全社的に広めたのが同社の酒巻久氏で、同氏は「目標だけ示して
  後は各部門に任せ、成り行きを見守った。」「目標は示しますが、手段は自
  分たちで考えさせます。トップが手段まで指示すると、それを超える工夫が
  出てこなくなりますから」と“やる気”のあり方を示唆しています。

  ここで、このケースをあげたのは「有能な人材」とは何か、どこにいるのか
  どのように育成するのかを再認識したかったからです。
  松下幸之助さんが、誰彼なしに「君、これどう思う」と聞いて「衆知」を集
  めていたことの意味がより分かるようにも思われます。
  「有能な人材」は誰かを間違えると、また育成しなければそれで負けます。

 

2.松下さんの人づかい法

  「有能な人材」について、松下幸之助さんの意見を聞きます。

  「有能な人材」を求めるについて「いい人というのは求めて必ずしも求めら
  れるとは限らない。十人いれば二人は志を同じくしてくれると思う。六人は
  まあふつう。あとの二人は意思に反する。だいたいこれが一般的」
  そして「そう諦観するから事業を安心して人を使い、事業を営むことができ
  てきたと思う。」と、あの「経営の神様」が言われています。
  
  それを踏まえて、より人材を活かすについてこんなことを言われています。
  
  「個人的な感情、好き嫌いで人を使ってはいけない。その仕事に役に立つ人
  かどうかで見なければいけない。『きみ、頼む。やってくれ』と頭を下げる。
  そこまで徹しなければ、ほんとうの経営者とは言えない。」
  「公明正大を貫き、長所を見ていけるかどうか、そんなところにも、信頼を
  得る大事なポイントあると思う。」と透徹して言われています。

  付け加えて、
  「人を使っていくことについては、作為的に考えてはいかんと思っている。
  自然のままがいちばんいい。腹が立つときは腹を立てる。叱る時は叱る。」
  「しかし、それだけでは具合が悪い。重要なのは『使命感』というか、そう
  いうものがなかったら人は育たない。使命感に基づいてものを言う。それが
  人を育てる源泉になるわけである。」と。

  また、
  「『好きこそものの上手なれ』だからその仕事をやりたいと考えている人に
  やらせるように持っていった方がいい。自分の都合を中心に考えているので
  あればそうかというわけにはいかない。自分本位でなくて、この仕事が好き
  だからやってみたい、というのであれば、そうさせた方が大体うまくいく。
  そう思いますな。」とも言われています。

  
  「本田技術研究所」の「技術者(専門家)」には
  『好きこそものの上手なれ』が尊重されており、そこでは「模倣でない役立
  つ技術」が要求され、それにひかれて「有能な人材」が集まり活躍できる素
  地があるように思われるのです。  

  2代目社長の河島喜好氏によって提唱されたものがあります。
  1.一人一件主義:担当する技術は1つのみ専念
  2.並行異質自由競争主義:異なる取り組みを自由に並行して研究開発 
  3.自己申告主義:研究開発テーマは自分で自己申告
  4.行動、現場、事実主義:行動と現場を重視し、事実として成果を実現

  追記  
  ここで少し整理したいことがあります。
  それは「有能な人材」に求められる「資質」のことです。
  これについて話をすすめると、少し込み入ってきます。
  ここでは簡単に「有能な人材」について説明すると「大きく2つの異質な資
  質に別れます」と中途半端ですが述べさせていただきます。