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物心両面の「目線を上げる」 No.176

<物心両面の「目線を上げる」>

 

1.「大ぼら」をふく

日本電産の永守さん、ユニクロの柳井さん、そしてソフトバンクの孫さ
 んの3人は「大ぼら3兄弟」なのだそうです。
 そのなか、最も「小ボラ」なのが永守さんだと本人が言っています。
 
 永守重信さんは、仲間3人とゼロから創業し、今や世界一のモーターメ
 ーカーにまで成長させたのですが、その「社名」からして壮大で、
 「松下電器産業をも超えるような日本一の会社を目指す」として「日本
 電産」と名付けたと言われています。
 そして、最初に手がけたのは、なんと基本方針作りだったそうなのです。

 その基本方針たるや「非同族企業」「いかなる企業のカサの中にも入ら
 ない」「インターナショナルな企業」の経営3原則であって、
 何故そこから始めたのかについて「永守イズムを記した冊子『挑戦への
 道』のなかに『始めにめざす目的、志をしっかりと掲げなければ、何事
 も成就出来ない』」とその意思を述べられています。

 これも「ほら」なのか、上質なマネジメントの基本セオリーなのか。
 ところで、永守さんが目標にした「松下電器産業」の松下幸之助さんも、
 少し趣が異なるものの「大ぼら」のようなものがあります。
 “水道哲学”で「真の使命は、物資を水道の水のごとく安価無尽蔵に供
 給して、この世に『楽土を建設する』ことである。」というものです。

 日本電産もパナソニックも卓越したエクセレント・カンパニーであり、
 この両社の「大ぼら」と「卓越性」には、何か相関があるのでしょうか。

  またドラッガーに言葉を手がかりに考えてゆきたいのですが、
 「成果をあげる人とあげない人の差は才能ではない。いくつの『習慣的
 な姿勢』と『基本的な方法』を身につけているかどうかの問題である。」
 「卓越性」を実現させる経営者の「習慣的な姿勢」には、
 「経営の節目」ごとに時宜に適った「大ぼら」を宣言することもあり。

 宣言したらなら、それを有効に「卓越性」に導かなければなりません。
 また「大ぼら」こそが「卓越」を適えるための「道具」でもあります。

 そうしたら「大ぼら」を実現するための「基本的な方法」とは何か。
 「自らの強みを知り、得意とする仕事の仕方を知り、自らにとって価値
 のあるものを知ればよい。これに加えて、成果をあげるための原則を知
 ればよい。何に貢献すれるべきかを明らかにし、何に集中すべきかを定
 め『目線を上げればよい』。」が解答で、その含蓄をご理解ください。

 さらに「大ぼら」の「効用」について、こんなことを言っています。
 「自らの成長のために最も優先すべきは『卓越性の追求』である。そこ
 から『充実と自信が生れる』」。 


  「ほら」には、3種類に分類される「ほら」があります。
 それは「志(こだわり)ぼら」と「欲ぼら」とそれらが混合した「混合
 ぼら」で、それぞれにはそれぞれの「効用」があるのです。
 大成功する経営者には「志(こだわり)ぼら」と「混合ぼら」の大家が
 結構多くいるようで、経営用語としては“ビジョン”とも言います。

 今回の課題は、企業を大きく成長させるには「大きなほら=大構想」が
 必要だということで「志(こだわり)ぼら」がないようでは、世界を相
 手にする「差別性」を実現させることはできなということです。
 この「大ぼら」ともいえる「大構想」の“マスター”は問われたら、そ
 れは「この世を楽土にする」と宣言した「松下幸之助」となりそうです。
 
 ちなみに「混合型ほら」の代表者となると、草創期に従業員を相手に、
 「売上を豆腐のように一丁、二丁と数える(=1兆、2兆円)」と言い、
 会議の席では「これから始めるプロジェクトは、歴史に残るものになる。
 この会議はその始まりになる、歴史的会議だ。」とそんなセリフをしょ
 っちゅう言う「孫正義」ということになりそうです。

 「卓越」せる経営者は、たえず継続して『目線を上げます。』。
 また『一番になる』は、卓越するための必須の「習慣的な姿勢」です。

 「京セラ」は京都市の西ノ京原町というところで創業したのですが、
 その始めから続けて、稲盛さんは自らの夢を繰り返し語ったそうです。
 「今に京セラをこの原町一の会社にするのだ。原町一になったら次は中
 京区一に、中京区一になったら京都一に、京都一になったら今度は日本
 一にする。そして、日本一になったら次は世界一だ。」と。

 なぜ、そうしたのかについては、
 それは「高い目標を設定する人には大きな成功が得られ、低い目標しか
 持たない人にはそれなりの結果しか得られません。自ら大きな目標を設
 定すれば、そこに向かってエネルギーを集中させることができ、それが
 成功の鍵となるのです。」と心裏までも語っておられます。

 日本電産の永守さんは、社名をブランド名や、海外子会社に使っている
 「Nidec(ニデック)」に変えるかもしれないと、株主総会で明かし。
 社長の世代交代も果たし、いよいよ「世界一」を完全視野に入れて、
 2030年度には売上高10兆円を達成しようと、また「″大ぼら”たる大
 構想」を披瀝しているのです。

 

2.目線をどこに置くか 
 経営者がおかす多くの失敗には、2つの基本的なケースがあります。
 一つは「儲け」ばかりに懸命になり、企業活動の原点たる「使命」を考
 えないことで、もう一つは「使命」ばかりに重きを置いて継続の原資た
 る「儲け」を度外視することです。
 「使命」が先行しますが「儲け(利益)」とリンクしています。

 このことを松下幸之助さんは、
 「事業を通じて『社会に貢献するという“使命”』と『適正な“利益”』
 というものは決して相反するものではなく、その使命を遂行し、社会に
 貢献した報酬として社会から与えられるのが「適正利益」だと考えられ
 るのである。」と言われています。

 「利益」をドラッガーは、このように言います。
 1.利益は成果の判定基準である。
 2.利益は不確定性というリスクに対する保険である。
 3.利益はよりよい労働環境を生むための原資である。

 そうしたらということになり、つまり「使命」を社会に貢献させて「利
 益」となすための「基本的な方法」はということになります。
 それこそが、最も貴重な経営資源である「“人材”をマネジメントして
 “成果”を実現させる」こととなります。 
 ここで、その「人材のマネジメント」を一考して行こうと思うのです。

 また、話がこじれて来ていますが、このことをじっくりと熟さなければ
 「卓越する経営」を行うことができず、いつまで経っても消化不良の状
 態から脱することができません。

 幸之助さんは新入社員にも名前で声をかけたそうで、その「理由」は、
 「“企業は人なり”とよくいわれるが、そのことばは、人間の尊さを知
 ってはじめて本当のものになるわけである。人間の尊さというものを真
 に理解することがなければ、いくら口で“企業は人なり”と言っていて
 も、それはよりよい姿に結びついてこないのではなかろうか。」
 
 “人材”を「道具」としてのみ活用すれば、企業を「生活のための手段」
 とのみとらえて大きな貢献を果たそうとは思いません。
 そうではなくて「尊い存在」であると理解し接すれば、自ずからそこか
 らは異なった活動が生れてくるとしています。
 幸之助さんは「それぞれの天分を生かし“成功”を後押しする。」と。

 話題を、戻します。
 実に「大ぼら(ビジョン)」にも、経営者自身も含め“人”をして
 「目標を知らしめ」「目線を高め」さらに「“貢献”への活力を呼び起
 こす」“効用”があり、これも「人材のマネジメント」の一つです。

 一発芸人ならぬ、諸人があこがれる「一発経営者」というものがあり。
 たまたまの経営の真似事で、一攫千金という幸運があります。
 これは確かにうらやましいものなのですが、高級車を乗り回し高級クラ
 ブで遊びまわり、これで真っ当な「マネジメント」は困難でしょう。
 一発芸人のように「良い思い」の後は、逆落しの悲惨の一言に尽きます。

 ただし、いつもそうなのですが、失敗したから何もなくなるということ
 はなく、一発でも成功させる素養があり、経験が加わったので、その人
 が「マネジメント」に目覚めれれば「鬼に金棒」となるでしょう。
 
 多くのご託をならべていますが、最後に実際の企業の動きを観ます。

 ドラッガーは“人材”が生き生きと働くためには「価値観になじまなけ
 ればならない」「共存できなければならない」とし、
 さもなければ「心楽しまず“成果”が上がらない」としています。
 このことについて、スマホから誰でも簡単に売り買いできるフリマアプ
 リの「メルカリ」のユニークな「人材募集」方法を探ります。

 まず最初に「メルカリ」の「ミッション」と「バリュー」を示すと

 ミッション(使命):
 <新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る>
 「世の中では多くのモノ・サービスが生産・販売されていますが、誰か
 には価値があるのに捨ててしまうなど地球資源の無駄になっていること
 が多いと私たちは考えています。『捨てる』をなくすために、個人間で
 簡単かつ安全にモノを売買できる」

 バリュー(行動規範):
 <Go Bold( 大胆にやろう )>
 「世の中にインパクトを与えるイノベーションを生み出すため、全員が
 大胆にチャレンジし、数多くの失敗から学び、実践します。」
 <All for One( 全ては成功のために)>
 一人では達成できない大きなミッションを、チームの力を合わせ、全員
 が最大のパフォーマンスを発揮することで実現します。」
 <Be Professional(プロフェッショナルであれ)>
 メンバー全員がその道のプロフェッショナルとしてオーナーシップを持
 ち、日々の学びを怠らず、成果や実績にコミットします。」

 この「ミッション」「バリュー」より見ると、きっちりとした「マネジ
 メント」の王道を重要視して運営していることが窺えます。
 この二つなくして事業を行うのは、羅針盤なしに海図も持たず航海する
 のと同じなので、経営者の見識を確認することができます。
 そうしたら、次には「人材」についての見識はどうなのかと。
 
 そこで、注目したいのが「メルカリ」が行っている人材採用の方法、
 社員から推薦を受けた人を採用する「リファラル(紹介)採用」で、
 ミッションとバリューを共有する今いるメンバーが、会社のそれらとそ
 こから生まれる社風を感じながら、自分たちの仲間として一緒に働きた
 いと思う人に狙いを定めて口説くのです。

 この方式は戦略的でもあり、革新的でもあるとも言えます。
 ムダなお金は使わずに、効率よく適した人材探しができます。
 「ミッションとバリューを社員がきっちり理解していれば、採用したい
 人物像も明確に見える。だから、バックグラウンドが多様性に富んだ人
 を採用してもブレることがありません。」となります。

 もっとも、縁故採用だともみられるのですが。
 ただし、ミッションとバリューに重きを置いているのが異なります。

 「ミッションとバリューにコミットできない会社は立ちいかなくなる、
 というくらいの覚悟が経営者にないと、それは文化にはなりません。」
 「僕たちの組織は、上から下へという『縦の関係』ではなく、みんなが
 フラットで自由度が高い『横の関係」です。だからこそ“ミッション”
 と“バリュー”がなければ、組織は動いていきません。」

 「『3人に声を掛けて3人を採用できたら最高』と考えるようになるこ
 と。その上で、外部から人を集めるのも、会社の魅力を伝えるのも、採
 用する人を選ぶのも、全て社員が自分事として関わっていく。」
 「企業と個人が対等な関係だからこそ、そんなリファラル採用が成立す
 るのかもしれません。」


 そんなメルカリが、ミッションの詳細において、もっと「大ぼら」が混
 じるとさらに「おもしろい展開」が起こるのかもしれません。