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経営は『総合芸術』だ  165

<経営は『総合芸術』だ >

 

1.「経営者のあり様」とは 
  「もうやめてしまいたいと思うことがある。それだけだったら本当におしま
  いになってしまう。行き詰まりになる寸前に『苦しみを楽しみに変える』。」
  「経営者と言うものは、つねに死を覚悟して、しかも方向転換する離れ業を
  を心に描ける人でなければならない。まあいわば『空中ブランコ』みたいな
  仕事ですよ。経営と言うものは・・・」

  「経営者というものは広い意味で『芸術家』だと思っている。経営そのもの
  が一種の『総合芸術』だと考えているからである。白紙の上に四方八方に広
  がる芸術を目ざしている。したがって『人生とは何なのか』『人間とは何な
  のか』というところから出発しなければならないほどのものだと思う。」
  これらは『松下幸之助さんの言葉』ですが、すごい思い入れです。

  松下さんの境涯は「功成りとげた」のですが、
  肉親との縁は薄く『人生とは何なのか』ということ模索し“成功”しないで
  はおさまらない“定め”を持っており、そのためにおいての『人間とは何な
  のか』ということも突き詰めずにはおられなかったのでしょう。
  
  
  こんな話をしてよいのかどうか、日常的にはこんなことが多くありました。

  経営者の方からよく「従業員が“やる気”がないのでどうしたらよいか。」
  と相談をよく受けた時期があり、ある意味では同情もしました。
  「苦労ばかりで、こんなことなら従業員である方がよっぽど気楽でマシだ。」
  と言われるので、そこで「そうですね。従業員さんの生活まで守らなければ
  いけないのでは、苦労が絶えませんね。」と慰めた次第です。

  話を続けますが、その時に答えられた一言が印象的でした。
  「自分のことで精いっぱいで、従業員のことまで気を使う余裕などない。」
  と、ただこれってわりとよく聞くものでそんな時にこのように思ってしまう
  のです「ああ、これが従業員さんが“やる気”をなくしている原因なのだ。」
  「これではこの経営者には、未来がないなあ。」と残念に思った瞬間でした。  
  
  松下さんは「経営者のあり様」についてこんなことを言われています。
  「経営者ともなれば、休んでいたり遊んでいても休んでも遊んでもいない。
  何かしら常に経営に思いがかよっている。窮屈と言えば窮屈だし。疲れると
  いえば疲れることだといえる。しかし、人の上に立ち、その人達の運命を担
  うということは、それほどのものだと思うのです。」
  
  その上で「そういうところに経営者としての生きがいといいますか、面白み
  といいますか、あるいは救いというものがあるのではないでしょうか。そう
  いうものを少しでも感じられるようですと、これは窮屈でもなく、疲れにな
  らないと思います。」と経営者の“やり甲斐”を語られています。
  この思いは伝わるもので、重要な「経営のコツ」の一つともなるでしょう。


  事業(ビジネス)について、抗しがたい一つの「神話」があります。
  「ビジネスとは、雇用者と労働者が賃金の支払いを通してなされるもので、
  両者の間に“感情”を通わす人間関係を持ち込むのは筋違いだ。」と。
  この考え方は、ふだんに合理的と自称される経営者がお持ちの「考え方」で、
  問題は優れて「卓越性」を獲得しようとするならそれが有効なのかです。

  経営においては「卓越性」を獲得しないのでは「存在価値」を失います。
  顧客や社会から見向きはされず、高い対価が支払われることはもちろん低い
  対価ですら支払われることはなく、確実に命を奪われることにもなります。
  松下幸之助さんのように『人間とは何なのか』を突き詰めて「製品をつくる
  前に人間をつくっている。」でなければ卓越することができないでしょう。

  とにかく「お金を払っているのだから。」「生活が成り立つことまで面倒を
  見るゆとりはない。」などと安閑とやっているのでは勝てない。
  「人間とは何か。」を考えつくして、その人間の持つ特性を最大に活かしき
  ればこそ『悩み多い、波乱万丈のある日々ほど、志ある人、なすことのある
  人にとっておもしろいといえる。』となり実利と栄誉がともに来たる。
  と「松下さん」が、言われているのです。
  
  ほとんど前置きばかりなっていますが、松下さんは『生きた経営というもの
  は教えることはできない』と言われます。
  経営とは論理と情熱と価値観が交差する『総合芸術』として見て『苦しみを
  楽しみに変える』心持を持つより術なしなものなので、ここのところが経営
  者をして偉大に成さしめる「心境」だとも解釈されるのです。

  これはもちろん「道徳」を言っているのではなく、また「スキル」を言って
  いるのではなく『総合芸術』としての課題と考えさせられます。  


2.不況さらによし     

  松下幸之助さんには『人生とは何なのか』を突き詰めないではいらいれない
  “生い立ち”があり、そのことが生涯を通して大きく影響しており。
  生家の没落、親兄弟を早くして亡くしたこと、さらには自身が虚弱な体質で
  あったこと、追い打ちをかけるように長男を1歳でなくしたことなど、自分
  を律するには深く思索しないではいられなかったことでしょう。

  これだけのマイナスの生い立ちであれば、また天涯孤独でなんの支援も期待
  できない身であるなら、大成功を収めて帳尻合わせるより納得する法はなか
  ったと思うのです(もちろん自暴自棄の末の破滅の道もあるのでしょうが)。
  松下さんは「運が良かったから成功した」と言われているのですが、確かに
  これだけの試練があっては失敗するわけにはいかなかったでしょう。

  そんな松下さんだから、経営の根幹たる『人間とは何なのか』も深く思索し
  た末に論理を超えた「境地」を持たれるに至ったのでしょう。
  もとより本妻の子以外に4人の子供をつくられている事実があることからみ
  て「聖人」ではないのだけれど、その言われることは「実践」の中での成功
  と失敗から生まれた「精髄」であり耳を傾けないではいられません。
  
  
  松下さんは「好ましい経営者像」に対して思わぬことを言われています。
  それを『安心感のある社長』だとして「使われる立場になった時、こわいお
  やじさんではかなわない。何でもモノがいえる人、ある程度理解できる人、
  全部理解できなくともある程度理解できる人、そういう感じの主人のほうが
  仕えやすい。あまりシャープでは具合が悪い。」としているのです。

  自分自身のことについては
  「こわい社長だというより、どちらかといえば『気安い社長やなあ』という
  感じではなかったかなあと思う」「自分というものをそのままさらけ出して
  きた。私という人間がどういうものかということを、比較的つかみやすかっ
  た。だから、妙なこわさはなかったと思う。」と語られています。

  ほめること叱ることについては
  「机をたたいて叱ったことも覚えているが、毎日机をたたいていたわけでは
  ない。うまくしてくれた、ありがとう、と感謝することのほうが多かった。
  ほめるのが5回6回あって、叱るのはその間に1回ぐらいだったろうか。も
  し2回に1回も叱るようなことをしていたら、こちらが疲れてします。」

  さらに「ただ、会社が小さかった頃は、失敗したら、それが直接会社の命運
  にかかわるわけだから、とにかく真剣で厳しかった。毎日毎日必死で仕事を
  していたから叱るのもほめるのも“自然にに真剣になっていた”ことだと思
  うが、その点は社員の人たちも、よく理解していてくれていたのだと思う。」
  と「本田宗一郎さん」と同じようなことを言われています。
  
  
  以前にも紹介したのですが、代表的なこんなエピソードがあります。

  「昭和4年、政府の緊縮政策があり加えて二ューヨーク株式市場の大暴落が
  ありそれを契機にして世界恐慌が勃発しました。そのために松下も売り上げ
  が止まり倉庫には在庫でいっぱいになり、このままでは倒産もやむなしとな
  り、そこで幹部から『従業員を半減し、この窮状を打開しては』との進言が
  あったのでした。」

  そのときに松下さんはどうしたのか。  
  「生産は半減するが、従業員は解雇してはならない。給与も全額支給する。
  工場は半日勤務にし、店員は休日を返上し、ストックの販売に全力を傾注し
  てほしい」と指示したのでした。
  この策は、全員の歓声で受け止められ、そこから一致団結が生まれました。

  結果は、全店員が無休で販売に努力し2ヵ月後にはストックは一掃され、逆
  にフル生産に入るほどの活況を呈するに至ったのです。
  

  ここで、松下さんも言われてもいる「後解説」を行います。
  「松下電器は何を作っている会社か、と聞かれたら『人をつくっている会社
  です。』あわせて電気製品もつくっていますと答えなさい」と言わせたのは
  松下さんで、始めのころから「繁栄の根幹」を“人材”としていました。
  これを失うことは、将来に致命的な打撃をうけると思われていたのです。

  別ごとなのですが、松下語録で「好況よし、不況さらによし」があります。
  それは「不況」の時こそが“危機感”を共有でき、弛んだ企業の根幹を返り
  見て考えて変革させれるまたとない「機会」であるとするものです。
  ただし、不況の時に変革するのでは後手を踏み、好況期に“危機感”をつく
  り日常的に変革を行うのが松下さんが行う“上手の知恵”といえます。