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“目標”に焦点をさだめ集中する  163

<“目標”に焦点をさだめ集中する>

 

1.『方向指示器つきお茶くみ業』     
  前回に続き、松下幸之助さんが言われていることをさらにさぐります。

  こんな面白いことを言われています「社長は『お茶くみ業』である。これ
  には但し書きがつく。それは何かというと『方向指示器つきお茶くみ業』
  ということになる。」「次々とその時々の目標を示す。その目標にみなが
  力強く取り組み、懸命な努力を続けてくれる。そうした姿に対して、私は
  心の中でお茶をくみ続けてきた。」

  これも「“大”となるための基本的な“心構え”と“術”」なのでしょう。
  具体例も含め、こんなことを言われているので耳を傾けます。

  「行うべき方向を指示しなければならない。大きく言えば“経営の理念”
  “使命感”ということであり、より具体的にはそれに基づくその時どきの
  “目標”を指し示すということである。」
  「毎年の1月10日に経営発表会というものをもって、その時々の方針や
  目標を明確にさし示すということである。」

  <昭和31年に、民間企業ではじめての5か年計画発表>
  「前半の売上が約200億円であった。それを5年後の昭和35年には4倍の
  800億円にしていこうというわけである。みなは一たんは驚いたけれど、そ
  れぞれの立場でその目標を目指して懸命に努力してくれた。折からの電化
  ブームもあって4年で達成してしまい、5年目には1千億円になるという
  ほどの成果があがった。これには、実は私自身驚いてしまった。」
  
  <5年後の昭和40年には週休2日制にしよう>
  「国際的な競争の場に立たされる。厳しくなって心身も疲れるだろうし、
  国際人としての教養も高めなくてはならない。だから、週休2日にして、
  1日休養、1日教養ということが必要になって来るだろう。その準備にか
  かろうというわけである。いろいろ反響があったが、協力一致して、予定
  通り給料も売り上げも落とすことなく実施することができた。」

  <昭和42年には、5年後には賃金を倍加させよう>
  「賃金をアメリカに近づけるようにしたい。そのため会社として、従業員
  として、労働組合として、どういうふうにやったらよいかを考えようとい
  うわけである。労働組合も全面的に賛成してくれ、協働の力によって、5
  年間で初期の目標を達成できたのである。」

  松下さんは、これらの成果についてこのように言っています。  
  「そうした成果は私の力で上げたのではない。私のちからでやろうとした
  らできなかっただろう。私はただその時々で“目標”を示しただけである。
  大事なことは“目標”を与えることである。あとは口やかましく言わなく
  ても、たいていの人は創意工夫してやってくれる。」

  「目標が与えられなければ、社員の人は何をしていいか分からないから、
  あまり創意や工夫は生まれない。」
  「これは何も社長だけでないのは当然である。一つの部署をあずかり、何
  かの人を使う立場にある人、つねにそう心がけなければならない。そうい
  うことがなされたならば『人は生き、成果があがってくる』だろう。」


  ここで少し、よき“目標”管理について、いつものようにドラッカーの見
  解に耳を傾けようと思います。
  人の“受容性向”を明らかにする「コミュニケーションの原則」について。
  ドラッガーですが“コミュニケーション”について「それは“知覚”であ
  る。それは“期待”である、それは“要求”である。」と言います。
 
  経営者が、部下に対して「目標」についてコミュニケート(伝達)しよう
  とするとき「受け手の“知覚”能力の範囲を越えるとき、受け手の“期待”
  と合っていないとき、受け手の価値観、欲求、目的に“要求”が合致しな
  いとき」などは、まったく受けつけられないか抵抗すら受けます。
  受け手が受けつけようとしない「目標」は、本質的に無意味となります。

  「目標なき経営」には、焦点がないゆえに集中できず力は発揮されません。
  しかし、受けつけたくない“目標”では受容されず機能を発揮することは
  もちろん、場合によっては抵抗すらも受け有害ともなります。
  
  松下幸之助さんが部下に求めた“目標”を吟味してください。
  「人間には『利によって働く』という面と『世のため人のために尽くすこ
  とに喜びを感ずる』という面がある。」に則してみると、
  「崇高な理念を実現させようとする私たちの企業の成長に貢献する」「私
  たちの生活を豊かにする」この“目標”は、充分に部下に伝わります。

  これこそが“人の働き”を引き出して「高い業績と成長」をなさしめると
  ころの“経営(マネジメント)”の基本です。


2.心を一つにできれば     

  松下幸之助さんが3代目の社長に決めた山下俊彦さんは、企業の“あるべ
  き姿”についてこのように言っています。
  「企業は人間の集団である。一人の経営者が全力を出すより百人の社員全
  員が力を結集したほうが方が強いに決まっている。」
  そうしたら、どのようにすれば結集できるのかということになるのですが。

  「真剣に考えて行きついたのは『命令するのは良くない。社員が自発的に
  動いてくれるように持っていこう』ということでした。」
  「労使が包み隠さず話し合うこと、経営に関する本当の数字をありのまま
  にガラス張りにする。これを日常の仕事を通じて地道に理解を訴え続ける。
  意識を変えていくなのですが、これは一番骨のいることで。」

  「いったん自発的にやってもらえるようになればあとは楽で、そうした関
  係をもとにいろいろやっていくとお互いに『会社をよくすること』という
  “目標”に興味が湧いてくる、それぞれ責任感も出てくるのですね。」
    人材育成については「まず、自らの意思で物事をやるように仕向けること。
  二つ目が、認めてあげること。そして長所を伸ばすこと」としています。
  
  最後に、山下さんは中小企業の経営者が望んでやまない“優秀な人材”に
  ついて「優秀な人材ほど“できない”という理由付けをきちんとやる。大
  企業はそんな社員が多く集まっているから怖いのです。」と述懐し、
  “強み”はどうしたら持てるのかについて「知識より決意、つまりやるぞ
  という信念を持つこと。明るさを見つけ出すこと。」だとしています。

  次回に、今回と関連する課題として「2 まずは「事業の定義」から」へ
  と続けますが、
  関連するので、時間を置いてお読みいただければと思っております。